おりりんな日々

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本田由紀『もじれる社会』ほか

こんばんは。
最近、教育社会学者の本田由紀さんの著作を続けて読みましたので、今回はそれをご紹介しようと思います。

本田さんは1964年のお生まれですので、ぼくと同年齢です。『もじれる社会』(ちくま新書)は、『軋む社会』の続編であって、『社会をむすびなおす』(岩波ブックレット)を補完するという位置づけになるかと思います。
どちらも、統計資料を縦横に読みこなし、従前の指標や問題の立て方の不備を指摘しつつ、「戦後日本型循環モデル」社会の綻びについて論及しています。
ぼくも社会学科卒でありながら、統計処理に疎いために、読むのにはいささか骨が折れましたが、注目されていい著作であると思います。
「戦後日本型循環モデル」とは、70年代からバブル経済が破綻するまでの「安定成長期」に定着したもので、仕事・家庭・教育の各社会領域が、一方向の太いベクトルで資源を提供していることを指摘したものです。すなわち、仕事から家庭というベクトルでは、父親が安定した収入を家庭に持ち込むということ、家庭から教育については、教育に関する公的支出が一貫して低い日本社会にあって、主として母親が「教育ママ」として振る舞うことで、手薄い公的支出を代替・補完していること、教育から仕事に於いては、新卒の新規一括採用という形で労働力不足に対応してきたという、一見安定したように見えるモデルを指します。
しかしながら、問題点としては、各領域が、次の領域に奉仕するかのようなモデルであるために、その領域固有の意味が、このモデルが綻びを見せ始める前から「既に」形骸化していることが挙げられます。
このようなモデルは、急激な少子高齢化の進行や、若年層の非正規就労の割合が高くなり、今や新しく家庭を持つことさえ困難になりつつあるという現状、また、正規就労をしている場合であっても過労死ブラック企業などの問題に直面していることなど、多くの点で「綻び」を見せていながら、旧来のモデルを是として、これに適応することを目的としているような施策しか行われてきていないことなどの問題点が指摘されています。こうした現状を克服するためには、一方向のベクトルを、双方向的に転換することであると本田さんは述べています。
気がついた点としては、専門高校について相対的に高い評価をされていること。いわゆる、普商工農という順列は、ことに就業の実態と、当事者たちの自己評価を見ると当たっていないことが指摘されています。
さらに、「柔軟な専門性」が教育を通じて提供されることで、社会に飲み込まれない立脚点となることが挙げられています。
このように、たいへんに示唆に富む指摘がされている著作ではありますが、ないものねだりを承知で言えば、「マックジョブ」や「3k・4k」に象徴されるような、周辺的とされる職業領域をだれが担うべきなのかという論点が欠けているのではないかと思われます。
多くの方に読んでいただきたい著作として推薦したいと思います。
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